「部門間の連携がうまくいかない」「会議で本音の意見が出てこない」「若手がなかなか育たず、指示待ちになっている気がする…」。
こうした組織のコミュニケーションに関する課題は、多くの企業にとって悩みの種ではないでしょうか。
社員が安心して自分の意見を言え、互いに理解し合える風通しの良い職場環境は、生産性の向上やイノベーション創出の基盤となります。
本記事では、組織内のコミュニケーション不全を解消し、誰もが安心して発言できる「心理的安全性」の高い職場を育むための、基本的な「対話の技術」に焦点を当てます。
特に、「わたしメッセージ」と「傾聴」という、今日から実践できる具体的なコミュニケーション方法を分かりやすく解説します。
なぜ、あなたの想いは相手に届きにくいのか?コミュニケーションの「壁」の正体

私たちは日々、誰かとコミュニケーションを取っていますが、自分の意図が正確に伝わらなかったり、相手の真意を理解できなかったりすることは少なくありません。
特に職場においては、立場や役割の違い、あるいは過去の経験からくる思い込みなどが、円滑なコミュニケーションを妨げる「壁」となることがあります。
例えば、上司が部下に対して「もっと主体的に動いてほしい」という想いを持っていても、その伝え方次第では、部下は「またダメ出しをされた」「自分は期待されていないのかもしれない」と感じてしまうかもしれません。
このようなすれ違いは、社員のモチベーション低下や、組織全体の活力停滞に繋がってしまいます。
こうした「壁」を取り払い、建設的な対話を生み出すためには、まず自分自身のコミュニケーションの在り方を見つめ直すことが大切です。
想いを伝える第一歩:「わたしメッセージ」で誤解を防ぐ
相手に何かを伝えたい時、特に改善を求めたい場面で、つい「あなたはいつも〇〇だ」「なぜ△△しないのか?」といった、「あなた」を主語にした表現(あなたメッセージ)を使ってしまいがちです。
しかし、このような伝え方は、相手に「責められている」「評価されている」という印象を与え、心を閉ざさせてしまう可能性があります。
そこで活用したいのが、「わたし」を主語にして伝える「わたしメッセージ」です。
これは、相手の行動を非難するのではなく、その行動によって「わたし」がどう感じているか、どのような影響を受けているかを率直に伝える表現方法です。
例えば、部下からの報告が遅れている場合
- あなたメッセージ: 「なぜ報告が遅いんだ!ちゃんと期日を守ってくれ!」
- わたしメッセージ: 「報告がまだなので、状況が分からず少し心配しています。何か困っていることがあれば教えてもらえると助かります。」
相手を理解する究極のスキル:「傾聴」で心を開く
このように「わたしメッセージ」で伝えることで、相手は非難されたとは感じにくく、こちらの状況や気持ちを理解しやすくなります。
そして、問題解決に向けた協力的な姿勢を引き出しやすくなるのです。
大切なのは、相手を変えようとするのではなく、まず自分の気持ちや状況を誠実に伝えることです。
効果的な対話は、一方的に話すだけでは成り立ちません。
相手の言葉に真摯に耳を傾け、その背景にある想いや感情を理解しようと努める「傾聴」の姿勢が不可欠です。
傾聴とは、単に相手の話を聞くことではありません。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーンといった非言語的な情報にも注意を払い、相手が本当に伝えたいことは何かを深く理解しようとする積極的な関わりです。
傾聴のポイントは以下の通りです。
- 評価や判断を一旦脇に置く: 相手の話を途中で遮ったり、自分の意見を挟んだりせず、まずは最後までじっくりと耳を傾けます。
- 相手の感情に寄り添う: 「それは大変でしたね」「〇〇と感じられたのですね」など、相手の感情を言葉にして返すことで、共感していることを伝えます。ただし、相手の意見に全て同意する「同調」とは異なります。
- 非言語的なサインを送る: 適度な相槌やうなずき、相手の目を見て話を聞くといった姿勢は、「あなたの話を真剣に聞いていますよ」というメッセージを伝えます。
- 沈黙を恐れない: 相手が言葉に詰まっても、急かさずに待つ姿勢も大切です。沈黙が、相手が自分の考えを深めるための時間になることもあります。
このような傾聴の姿勢は、相手に安心感を与え、「この人になら本音を話しても大丈夫だ」という信頼関係を築く上で非常に重要です。
「わたしメッセージ」と「傾聴」が育む、心理的安全性の高い職場

「わたしメッセージ」で自分の想いを誠実に伝え、「傾聴」で相手の想いを深く理解する。
この2つの基本的な対話の技術を組織全体で実践していくことで、社員は安心して自分の意見やアイデアを発言できるようになります。
これが、近年注目されている「心理的安全性」の高い職場環境の醸成に繋がります。
心理的安全性が確保された職場では、社員は失敗を恐れずに新しいことに挑戦しやすくなり、建設的な意見交換が活発に行われます。
その結果、チームの学習能力が高まり、イノベーションが生まれやすい土壌が育まれるのです。
まとめ:日々の「対話」の質が、組織の未来を左右する
組織内のコミュニケーションは、人間関係における血液のようなものです。
その流れが滞れば、組織の活力は失われ、様々な問題が生じます。
「わたしメッセージ」と「傾聴」は、その流れをスムーズにし、組織の隅々まで健全なエネルギーを行き渡らせるための基本的なスキルです。
特別な研修を受けなくても、今日から意識して実践できることばかりです。
まずは、身近な人とのコミュニケーションから、少しずつ試してみてはいかがでしょうか。
日々の小さな対話の積み重ねが、やがて組織全体の風通しを良くし、より強く、より創造的なチームへと導いてくれるはずです。

弊社では、組織のコミュニケーション活性化を目的とした、より実践的な対話スキル向上のための研修プログラムや、心理的安全性の高い職場環境づくりを支援するコンサルティングを提供しております。
社員間のコミュニケーションに課題を感じている人事担当者様、経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
