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なぜ今「ウェルビーイング経営」なのか?社員の幸福が組織を強くする本質的理由

執筆者 | 2025年05月24日 | 研修, 組織醸成 | コメント0件

「優秀な人材が集まらない」「若手社員の離職が後を絶たない」「社内の閉塞感が強く、新しいアイデアが生まれない」…。

多くの日本企業が直面するこれらの課題に対し、解決の糸口が見えないまま頭を抱えている人事担当者や経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

従来の延長線上にある施策では効果を感じにくい今、注目すべきは「ウェルビーイング経営」という新たなアプローチです。

本記事では、なぜ今、企業経営において「ウェルビーイング」が重要視されるのか、その本質的な理由を、社員の価値観の変化や組織にもたらす好影響の観点から深掘りしていきます。

そもそも「ウェルビーイング」とは?幸福と何が違うのか

「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉を耳にする機会が増えましたが、その意味を正確に理解しているでしょうか。日本語では「幸福」と訳されることもありますが、ウェルビーイングは一時的な感情としての「ハピネス(Happiness)」とは区別して考える必要があります。

国連では「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること」と定義され、ポジティブ心理学の分野では「持続的幸福感のある、健やかな心の状態」として捉えられています 。

つまり、瞬間的な喜びだけでなく、心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態が持続することを指す、より包括的で多面的な概念なのです。

働く目的の多様化と「お金だけでは満たされない」現代人の価値観

かつて「働く=お金を稼ぐ手段」という価値観が主流だった時代から、現代社会では人々の働く目的は大きく変化しています。

内閣府の「国民生活に関する世論調査」によれば、「お金を得るために働く」という回答が依然として高い割合を占めるものの、「生きがいをみつけるため」「社会の役に立つため」「自分の能力をためすため」といった、より内面的な充足感を求める声も顕著です 。

実際に、経済学における「限界効用逓減の法則」が示すように、ある一定水準を超えると、収入が増えても必ずしも幸福度が増し続けるわけではありません 。

心理学者のティム・カッサーとリチャード・ライアンの研究では、「お金を稼ぐ」「有名になる」といった外的な目標を持つ人は、その目標の達成度合いに関わらず、「自己成長する」「良い関係性を築く」といった内的な目標を持つ人に比べて幸福度が低い傾向にあることが示されています 。

これらの事実は、現代の社員が金銭的な報酬だけでなく、仕事を通じて得られる自己成長の実感や、社会への貢献といった精神的な充足感を重視していることを物語っています。

自己実現とエンゲージメントが鍵!ウェルビーイングがもたらす好循環

社員のウェルビーイングを高めることが、なぜ組織にとって有益なのでしょうか。

その答えは、心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求段階説」における最上位の欲求、「自己実現欲求」にあります 。これは、「自分の能力を存分に発揮し、より自分らしくありたい」という内なる成長欲求であり、マズローは「仕事は自己実現を成す上で最大級の有用性を持つもの」と位置づけています 。

社員が仕事を通じて自身の強みを活かし、成長を実感し、仕事そのものに意味や意義を見出すことができる状態(ウェルビーイングが高い状態)は、社員のエンゲージメント(仕事への熱意や没頭度)を高めます。

そして、エンゲージメントの高い社員は、自律的に行動し、創造性を発揮し、組織全体の生産性向上やイノベーションの創出に大きく貢献します。

このように、社員のウェルビーイング向上は、個人の成長と組織の成長が互いに促進し合うポジティブな循環を生み出すのです。

ウェルビーイング経営への第一歩:組織として何から始めるべきか

では、組織としてウェルビーイング経営を推進するためには、何から始めるべきでしょうか。

まず重要なのは、経営層や人事部門がウェルビーイングの重要性を深く理解し、それを経営戦略の中心に据えるという強いコミットメントです。

その上で、社員一人ひとりの価値観や強みが尊重され、心理的安全性が確保された風土を醸成することが不可欠です。また、社員が自律的にキャリアを築き、成長を実感できるような機会の提供や、オープンで建設的なコミュニケーションが活発に行われる環境づくりも求められます。

具体的な施策としては、1on1ミーティングの質の向上、キャリア支援制度の充実、公正な評価制度の導入、そして社員の心身の健康をサポートする取り組みなどが挙げられます。

これらの詳細については、今後の記事でさらに深掘りしていきます。

まとめ:未来志向の組織成長は、社員の「ウェルビーイング」から

本記事では、現代企業にとって「ウェルビーイング経営」がいかに重要であるか、その本質的な理由について解説しました。

社員の価値観が多様化し、物質的な豊かさだけでは満たされない現代において、企業が持続的に成長していくためには、社員一人ひとりが心身ともに健康で、仕事を通じて自己実現を果たせるような環境を提供することが不可欠です。

ウェルビーイング経営は、短期的なコストではなく、未来の組織を強くするための重要な「投資」です。社員が輝き、組織全体が活性化する未来を目指し、ウェルビーイング向上の取り組みを始めてみませんか?

弊社では、本記事で触れたようなウェルビーイングの概念を深く理解し、貴社の組織課題に合わせた具体的な施策をデザイン・実行するための研修プログラムをご用意しております。

組織の現状分析から、ウェルビーイング向上のための戦略立案、そして管理職や社員向けの研修実施まで、トータルでサポートいたします。

ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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